2021年3月4日木曜日

2020年モスクワ旅行記(5日目)。おとぎ話の世界にきちゃった〜!?の巻。

  2月23日(日曜日)。

 昨晩から降りはじめた雪は、朝になってもチラチラと降りつづけ、窓から見える屋根や木々は、みんなうっすらと白い化粧をしている。モスクワに来てはじめての雪で、ようやくイメージしていたモスクワの冬を実感したような気になった。風もあるので、今日は観光できるかどうか不安だったが、天気予報を見ると午後にはやみますよとのこと。不思議なことに、正午になると雪も風もピタッと止んで、お日様が顔を出した。すごい、的中。外の気温は2度、今日はトレチャコフ美術館の新館へ向かおう。


旅の準備から前日19日、ロシアへいきた~い!の巻

2月20日、『レーニンを見に行きた~い!の巻

2月21日、『ガガーリンとライカに会いた〜い!の巻

2月22日、『トレチャコフ美術館へ行きた~い!の巻


 トレチャコフ美術館の新館は、昨日訪れた本館から南西、地下鉄2駅分ほどの所にある、川沿いの大きな公園内にある。最寄駅になる6番オレンジ線のヤキマンカ駅からすこし距離があるようだが、やんだばかりの雪で湿った道は、うまれてはじめて履いたスノーブーツを試すのに、絶好の機会だ。ちなみにヤキマンカの地名は、日本のインターネット上では、何故かヤキマンコという名前で呼ばれてれている。



(今日の日記漫画は無しですよ。)


 こちらは、本館と別館の伝統的な建物とはガラッと変わり、コンクリートの箱のような、いかにも20世紀的な建物だ。オープンは1983年とわりと新しい。新館は主に、常設展として、1917年ごろから1900年台初頭のソビエト時代の作品の展示場と、企画展などを行う複数の展示場があり、いずれも独立した入り口を持っている。




 今日のスケジュールとして、まず初めに特別展示室へ。2月22日に始まったばかりの「ロシアのおとぎ話の展示会」を見るのだ。入り口に到着はしたものの、10人づつの入出場制限をしているらしく、外の列に並んで待つこと10分。手荷物検査後、チケットを購入、500ルーブル。コートを預けて二階へ上がると、展示会の看板にもなっている、ヴァスネツォフの『イワン王子と火の鳥と灰色狼』のイワンとエレーナと狼の絵をを可愛らしくデザイン化した大きな看板が出迎えてくれた。展示会場の入口へ向かう大きなホールは、まるで冬の空にうかぶ雲か生霊か鳥か雪か、とにかく見るものにインスピレーションを与えるような、たくさんの白い布の塊のようなものがぶら下がり、エスカレーターを降りると、なんと、銀世界が待っていた。




 ロシアのおとぎ話の世界をイメージした室内には、4つの部屋で構成されている。まず、入口に緑色の四角い「石の部屋分岐点」という部屋があり、そこから東西南北に扉が放たれていて、見学者達をおとぎ話の世界へといざなう。




 南の入場口を基準にし、東は地下の王国で、迷路のように複雑な暗い部屋になっており、見学者達はヒーローになって、三頭のドラゴンと戦ったり、バーバ・ヤーガと出会ったり、王冠やクリスタルの棺桶を、まるで氷の洞窟のように模られた展示室内を、上へ下へと探りながら冒険する。西は水中王国で、人魚やカエルの王女様、ルサルカやサドコや金魚などと一緒に、大きな波が押し寄せ、黄金の魚が泳ぐ空間でただよう。




 北は魔法の森で、大きな円形の部屋の壁には、上から下までぐるっと大きな鏡が貼り付けられ、雪化粧で真っ白に輝くような沢山の大木が立ち、動物たちが隠れ、中心には大きな熊が眠っている。 展示室の最も北にもう一つの四角い分岐点があり、四角を区切る斜めに建てられた壁には、ヴァスネツォフ画の魔法の絨毯の絵が飾られ、その奥の突き当たりには下半分がとろけた絨毯が飾られている。その左右の壁に、私の大好きな頭が女性で体が猛禽類のスラブの妖怪、シリンとアルコノストの対の立体作品が配置されていたのも、この展示会ならではだ。




 そのあちこちに、絵画や彫刻、写真、ビデオ、音、絵のキャラクターの小道具などが散りばめられている。展示室のどれもが、驚くほど手が混んであり、まるでテーマパークにでも来たような雰囲気だ。ここまで手の込んだ絵画の特別展は、生まれてから一度も見たことがない。

 もちろん、各部屋ごとにふさわしい物語の作品が展示されており、映像作品のあるものの一部は、そのビデオと衣装のスケッチなどともに展示され、各キャラクターのそばには、剣やホウキのようなふさわしい小道具も用意されている。覗き穴から見る作品や、絵や写真をデジタル処理をし、まるで動いているように見せるインタラクティブなものもたくさんあった。




 展示品のほとんどが、イリヤ・レーピン、ヴィクトル・ヴァスネツォフ、ミハイル・ヴルベル、レオン・バクスト、エレナ・ポレノバ、イヴァン・ビリビンなどのお馴染みの作家の有名作品ばかりだが、現代アーティストによる新しい作品も多数展示されているため、うまくバランスが保たれ、子供からお年寄りまで、見るものを飽きさせないであろう、楽しい空間に仕上がってた。



 満足して会場を出て、新刊の常設展へ移動する前に、もうひとつ別の展覧会の入り口があったので入ってみることにした。こちらでは活躍中の作家を含む、現代芸術の展覧会が行われていた。彫刻、絵画、写真、版画、手芸、なんでもありで、想像以上にたくさんの作品が展示されていた。どのの作品のもレベルが高く、個人的に購入したくなるようなものも多数あった。どこの国でもそうかもしれないが、美術作品も、強いメディアが持ち上げたりしない限り、多くの人々が目にする機会はほぼ無いというのはとても残念なことだ。



 彫刻の写真を撮っていると、私と反対のルートから鑑賞していた白髪の中年男性が、歩きながら柔らかな笑顔で軽く話しかけてきた。こちらも笑顔を返したが、あれは、たのしんでますか?とか、お気に召しましたか?とかいっていたのだろうか。なんだかよくわからないけど、こういう場所での他人同士のさりげない交流はとても嬉しい。言葉がわからないのが悔やまれる。




 常設展示室へ向かうために、一旦外へ出る。夕方近いが、まだまだ明るく、駐車場に展示されている車のオブジェは、子供達がよじ登ったり笑ったりてして大賑わいだ。



 ここでもまたチケットが必要になる。大人一枚600ルーブル。ATMがあったので、ついでにここでお金も下ろしておく。海外旅行先のATMで現金を引き出したいときは、博物館や美術館、もしくは必ず警備員がそばにいるような場所を探して利用することにしている。なぜなら、大体すいているため、慣れずにもたついていても、じっくり落ち着いて操作できることと、監視の目が行き届いているため、スキミングや窃盗の心配がほぼ無いからだ。




 入場してすぐ階段を上がったところの吹き抜けに、打楽器のような遊べる作品と並んで、みたことのある鉄の彫刻が現れた、ウラジミール・タリトンの“第三回国際記念碑”だ。タトリンの塔とも呼ばれる、鉄柱やガラスなどを組み合わせて作った螺旋階段のような塔の完成イメージ模型なのだが、20世紀初頭の芸術や文化を描いた書籍でたびたびお目にかかるのだ。自分の記憶が確かなら、今まで、あまり解像度のよろしく無い白黒の写真でしかみたことがなかったのだが、目の前にドンと登場すると流石に面食らう。写真だと冷たい無機質な塔のように見えていたが、実際はその反対で穏やかで柔らかい雰囲気があった。そのほか、展示室へ向かうまでに、いくつかの彫刻やレリーフをたのしんだ。また、大きな窓から見える外の景色がとても良い。




 そして、こちらでも美術館内の所々で、複数の特別展を同時に開催しているようで、この日が最終日だった、『芸術文化博物館100周年記念の展示会』から回ることに。私は未来派などの抽象芸術も好きなので、ここでも嬉しいプレゼントをもらったような気持ちで入場した。


 1919年から1929年の10年間だけ存在し、その後はトレチャコフ美術館に吸収された、“中央モスクワ芸術文化博物館”の所蔵品のなかでも、"リストNo. 1"と呼ばれる最高の作品たちを集めた展示会だそうだ。

 リュボフ・ポポワ、カジミール・マレーヴィッチ、ワシリー・カンディンスキー、ナタリア・ゴンチャロワなどの、ロシアを代表するアヴァンギャルド芸術形の作品を、1920年代半ばのモスクワ芸術文化博物館の博覧会での記録を元に、当時のレイアウトを再現して展示しているというこだわりようだ。

 

 特別展示場を出て、もう一度吹き抜けを囲む廊下に出る。常設展の入り口は、黒枠のガラス張りのなんでもない扉がひとつ、これだけ大きな美術館のメインルームであろう場所なのに、その小さな入り口には少し驚いてしまった。




 トレチャコフ美術館本館とは真逆の、飾り気のない無機質な展示室内は、規則正しい迷路のようになっている。右と左のどちらからでも進めるようだが、私は左から進むことにした。

 カンディンスキー、シャガール、ロドチェンコ、レントゥーロフ、コンチャロフスキー、サリヤンをはじめ、前衛芸術、社会主義リアリズム、近年の新しい作品など、ロシアの芸術にくわしくはなくても、少し芸術を勉強したことのある人であれば、ぱっと頭に浮かべるような作品が多数展示してあるのが、ここ新館の常設展示室である。日本でも大変人気のある、シャガールやカンディンスキーなどの、色彩の洪水のような作品だけではなく、もちろん、生活のいちぶを切り取ったような写実的な作品も多くある。




 こちらも、多くの美術館のように、作家や時代、ジャンルごとに分けてあるが。別々の作家が書かれたであろう絵でも一枚一枚順におっていくと、なんと、ストーリーが繋がっているように読み取れることに気づいた。

 例えば、元気な子供たちを描いた絵画が並んでいるコーナーがある。そこで友達と楽しく遊ぶ子供達の絵の次には、同じ年齢ごろの男の子が寄宿学校へ行くであろう日を切り抜いた作品、その次は、また同じくらいの年齢の、渋い顔をして学校から帰宅した少年を叱っているであろう母親のいる作品がある。ここで終わりかと思って角を曲がると、枯れ草の上で頭から血を流して倒れている牧童の絵があり、また左を見ると、銃を持ち、腰に手榴弾をぶら下げた老人の絵がある。5枚は別々の作家の作品であろうが、ここまでストーリーを持たせる演出は、どこの国の美術館でもまず無かなかったとおもう。しかも以降の数点は、ソビエト色の強いもので締めくくられている。ここまに来るまでずっと華やかで明るい作品が続いていただけに、唸ってしまった。








 他に面白かったのは、友人であろう彫刻家の肖像画を描いた絵の前には、その彫刻家が絵の中で制作中だったものの完成品が鎮座し、大家族の女性たちが記念写真のようにならぶ絵の前には、寝転んで頬杖をつき微笑む少女のブロンズ像があるなど、このように、ほぼ全ての展示室で、絵と彫刻をうまく組み合わせた展示を行っていたのも印象的だった。




(帰り道、偶然通りかかったところにあった、お菓子の家のような可愛い建物。イグモヌフという豪商が建てさせた邸宅で、現在はフランス大使館として使用されているそうな。)


 気付けばそろそろ6時になる、お腹も空いてきたので帰ることに。美術館の庭の彫刻を見歩きながら朝来た駅へ向かうが、なんと、駅へ着いてみたら、トロイカカードのチャージ機のある入り口が点検で閉まっているではないか。朝ここへくるときに使い切ってしまったので、乗車できる回数はもう残っていない。しかたなく、昨日利用した駅まで歩くことに。先にチャージしてからくるべきだった。

 ようやく券売機を見つけて、あらかじめスマホの写真に保存しておいた、操作方法を見ながらいじってみたが、いまいちうまくいかない。すると、後ろに並んでいた、同じ年齢くらいの男性が手を貸してくれて、ようやく手持ちの少ない小銭からで50ルーブルだけチャージ完了。名も無い紳士には感謝しても仕切れない。


 なんとかプロスペクト・ミーラへ到着し、今後このようなことがないよう、思い切って、1ヶ月使い放題のチャージをすることに決心した。2170ルーブル。初めからこうすればよかった・・・明日から出来るだけ地下鉄やトラムを利用しよう。



(おやつによく食べたプリャーニク。これはスーパーで売っている一口サイズのもので、蜂蜜と小麦粉やスパイスなどで作ったお菓子で、ちょうど日本のかりんとうと丸ぼうろと甘食のいいところを足して割ったような味や食感をしている。安いしほんと好き。

これにもっとスパイスを足し、ドライフルーツやナッツを混ぜ、メッセージや動物などが描かれたりした型にとって焼いたおまんじゅうみたいなものもある。)


次回、6日目。

サーカスと人形劇をみた〜い!の巻

 へ、つづく。


旅の準備から前日19日、ロシアへいきた~い!の巻

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