2021年2月18日木曜日

2020年モスクワ旅行記(1日目)。ロシアへ行きた〜い!の巻

 えーと、2020年2月19日から3月10日までの約3週間、ロシアのモスクワに滞在しておりました。

 スケジュール上は、3月15日までいる予定だったのだけれど、例の新型コロナウイルス騒ぎの件やらで色々あって、帰国を1週間繰り上げての旅でございました。


 あんな時になにやってたんだ! 、と、お叱りの突っ込みが漏れる方も多数いらっしゃるかと思いますが、冬の北国ゆるゆる1人旅の記録をかいていこうかなーと思います。

 記事一本自体の文章も、それぞれむちゃくちゃ長くなってしまったので、ざっくり読める漫画を用意しました。

 あと、ミリタリー関係や冬スポーツ関係やオタク向けサブカルコンテンツ関係には全く興味がないため、それ系の話は一切出てこないので、そういった情報を望んでいる人はがっかりしてしまうかもしれないよ。








 はじめてのロシア旅は2016年の夏。年に1度、母と2人で海外旅行をしており、その年は私の希望で夏のロシアへ行くことになった。私は個人旅行で訪れたかったのだが、母は文字が読めない国へはまずツアーで行くべき、と言って聞かないので、仕方なく某有名旅行会社が企画する、サンクトペテルブルクとモスクワ1週間の旅を申し込んだ。サンクトペテルブルクのエカテリーナ宮殿とエルミタージュ美術館の見学がメインの旅で、モスクワでは赤の広場とクレムリンとセルギエフ・ポサド教会群を駆け足で見学するのみ。それなりに楽しんだのものの、まだまだ見足りない、むしろ毎年訪れたいというくらい、ロシアとモスクワという都市をますます気に入ってしまった。

 今度はいつ遊びに行けるかと思いながら月日は流れ、いい加減にプランを練らないと、このままでは延々と引き延ばしてしまうという恐怖を感じ、2019年の夏から飛行機やらホテルやらを物色しはじめた。しかし残念なことに、見学のメインにしようと思っていたトレチャコフ美術館の絵画のいちぶが、日本で回顧展をしている最中だというでははないか。ダメダメ、本物を見るのは本場でないと。ってことで、展覧会が終了し、美術品たちが故郷モスクワにお帰り遊ばすであろう、2月中旬に行くことに決定したのです。それも、住むように、くまなく観光するために、観光ビザを期限ギリギリまで利用するために、約1ヶ月間と贅沢に時間を使おうと。


 前年2018年秋のメキシコシティ以来の1人旅となる。同行者がおらぬ旅は、相手を気にせず好き勝手に歩けるメリットはあるもの、細かなところで負担がかかる。たとえば、複数人いれば、レストランなどで地元の名物料理を分けあい、多くの味を確かめることができるが、1人の場合は胃袋も予算も限界があり、観光名所や交通ルートも、手分けして下調べすることができないので、時間がかかり、また、リアルタイムで、あれはよかった、これは美味しい、などと、意見を交わすことももちろんできない。しかし、同行者がいる旅で良いところを考えると、この3つくらいかかしらと。そのほかのすべてのことは、1人の方がじっくり楽しめるのだ。


 今回は1ヶ月弱の滞在期間があると考え、いつもは出発ギリギリになってから準備をしだすのだが、珍しく秋のうちから計画をたて始めた。見学したいところや、食べたいもの、欲しいもの、その他もろもろを、インターネットで調べ上げ、紙切れに書き並べ、予算内に収まるように計算して行く。とにかく、帰国後に情報不足で後悔したくないので、Google MAPと旅行情報サイトのみならず、滞在者の個人ブログやSNSも利用して、より、ローカルなこともメモにしていると、やはり防寒具について事細かく書くものの記事が現れる。


 真冬に寒い都市へ行くことになるので、安全と防寒のための費用が出てしまうのは覚悟していたが、冬の北国へ行ったことが無いものから見ると、未知のアイテムだったりすのだ。さすがにいまどき、毛皮のコートなどはトレンドではないようだが、ダウンジャケットはフード付きで、ポケットとファスナーカバーがあり、なおかつお尻も隠れる丈のもが必須だとか、マフラーは首元にしっかり巻き、両端のプラプラしてしまう部分をコートに入れて熱を逃さないようにするだとか、ニット帽をかぶるだけで全然違うだとか、スノーブーツはこれこれこうだとか。かといって市内でガチガチに装備するのは厳禁で、室内はどこも暖房が聞いていているので、脱ぐことになるからほどほどに…と、どこをみても大体こんな雰囲気で書かれている。北国シロウトの私でも、なるほどなぁ、と納得できる解説陣なのだが、こちらはそれらの防寒具のほぼ全てを所有していない。ましてやスノーブーツなど履いたことがないのだ。雪や氷に耐えられる滑り止め隠された靴自体、滅多に雪が降らず、道もなかなか凍結しない東京都心部での街歩きでは、まず、無用のアイテムだ。それから、帽子をかぶるのがどうも苦手なため、ニット帽も持っていない。となると買うしかないのだ。ニット帽は二束三文でもじゅうぶんなものを用意できるが、ブーツはそうはいかない。軽くて足が疲れず、雪や氷でも大丈夫、となると、結構な額が出てしまい、予定していた準備金を軽くオーバーしてしまった。悔しいが仕方がない。無駄にしないように、現地で積極的に利用したいと切に思った。


 ホテルは飽きないように、9日ごとに移動することにした。見学したい箇所を3つの区間に分けて、それぞれもっとも移動しやすいであろう場所を選び、そこから冷蔵庫付きの部屋を探す。部屋が狭かろうが、バスタブがなかろうが、地元のスーパーマーケットや市場で買い物をするのが好きなので、冷蔵庫は必要なのだ。


 外資系の航空会社や旅行案内サイトは、イースターやらクリスマスやらのキリスト教系のお祭りが近づくと、大きなセールを行っている。それを利用して、予定よりグンと安く、航空券と3軒のホテルを予約することができた。
 12月にホテル検索サイトや航空会社の年末セールを利用して、ホテルも飛行機も予約して、バウチャーも取って、1月半ばにビザの手続きをしに行って、人形劇やらの予約を入れて、スノーブーツを購入して、さぁ、旅立つまでよ!と、ウキウキでいたのですがー‥‥

あれあれ?中国で新型コロナウイルスってのでパニックしているみたいなんですが?


う〜ん、どうしよう?


 そうこうしているうちに、2月に入ってしまった。クルーズ船、ダイヤモンドプリンス号での集団感染のニュースが世界中を駆け巡り、のんびりものの日本人達もようやく危機感を持ち始めた頃で、マスク装着の推奨と、あらゆる店の入り口に手指用の消毒液が置かれ始めた。

 私は以前よりショッピングセンターの店頭で液体消毒液を見かけると、好んでプッシュをしに行っていたので、消毒液の普及は嬉しい限りだが、マスクだけはどうも苦手で、粉塵が舞い異臭のする危険な場所にいたり、風邪をひいているのならばまだしも、健康な人間がマスクをして歩いているのは、病気があるのだろうか、とか、用心深すぎる人々なのだろうか、とか、顔を隠さなければいけない身分なのだろうか、とか、そんな偏見を抱きながら、健康そのものの自分には、みるのもつけるのも嫌なものだった。このころはまだ密度の高い場所以外では、つけるも外すもゆるい感じでやっていたと思う。これが1年後にはほぼ義務になっているとは思わなんだ。


 ロシア大使館の情報によると、2月3日からモスクワのハブ空港であるシェレメチェボ空港以外での中国人と在中者のロシア入国を制限し、20日からさらに中国人を全面入国禁止にするという。申し訳ない気もするが、騒ぎの元から封じ込めることは苦渋の判断かと。おまけに中国からのロシア人帰国者全員が、シベリアの隔離施設に送られ、症状無しと判断される2週間をそこで過ござなければならないという。まさにシベリア送り、という冗談は、私を含め、各SNS上で何万人もの人々が投稿したであろうか。これだけでも、この時点でまだ出入国規制のない、ザル状態な日本と比べると羨ましい限りのしっかりした感染症対策であった。


 ロシアに渡航する場合、日本国のパスポートを持っているものは、ビザとバウチャーが必要になる。もちろん有料だ。バウチャーはビザ獲得と、ホテルに滞在するときに必要となる証明書で、ロシアの代理店を通して書類を作らなければならないのだ。私が説明しても良いかもしれないが、なにせ、次に旅行する際には古い情報になっているかもしれないし、説明も絶望的に下手なので、Googleなどの検索サイトで「ロシア、バウチャー」など、入力すれば、はじめてでも簡単に手続きできる方法が書かれているブログなどが出てくるので、それを利用した方が賢いと思う。それらに習いながら、なかなかアバウトな入力だけで、わずか数日でe- mailのPDF書類でバウチャーが到着した。それを印刷して、証明写真とパスポートともに、ビザ発行センターへ持っていけば、10日ほどでカッコいいビザシールがついたパスポートを獲得できる。もちろん有料なので、ビザの必要となる国への渡航の場合、そのあたりの予算も計算しなければならないのだ。

 そうすると、ロシアの対策はしっかりしているし、感染者はほぼ中国だけだし、日本は渡航禁止されてないし。Twitterで現地の人の話を見ていると大丈夫そうだから、行くか!


 という勢いで旅行鞄に荷物を詰め始めた。200デニールの厚手のタイツとモンベルやギャップの長袖インナーをそれぞれ4組、毛糸のカーディガン2着、ニット帽1枚、断腸の思いで購入したスノーブーツ1足、帽子のついたダウンコート1着、マフラーとスカーフがを2枚づつ用意。それと、旅行にはいつも持って行く、ナイフ、食器、小型ポット、コンタクトレンズ、衛生用品やら液体洗剤やらシャンプー。プラスチックのハンガーや赤すりタオルなどの100円均一で揃えられるものやらなどなど。ニットや靴のボリュームがあるせいで、どうしても旅行カバンの中がいっぱいになってしまう。経験上、後々のことを考えると、鞄の半分が空になっているほうがなにかと都合がよいので、仕方なく防寒具以外の衣服を減らしたりしてなんとか頑張り、90リットルの旅行カバンの4割がた空きスペースを作ることができた。我ながら上々か。


 それから、今回はスノーブーツよりも高価なものを用意した。Appleのタブレット端末機、iPad Proだ。この夢のコンピューターは、以前より購入を検討していたのだが、我が仕事場には21インチくらいの据え置き型の、巨大なタブレットモニターがあるため、なかなか買おうという勢いがつかなかった。しかし今回は約1ヶ月の長旅であり、ありがたくも2月に3件の仕事が入る予定になっていたため、いやでも描画環境が必要になる。イラストレーターという自由がきく仕事をしているため、以前より、旅をしながら仕事をしてみたいと思っていたので、絶好の機会だと思い、思い切って12インチのiPad Proと描画をするためのApple Pencilを購入することにした。


これで準備万端だ。



 2月18日の夜、行列のできる宝くじ屋でお馴染みの、西銀座チャンスセンター前から出ている成田行き格安リムジンバスで空港へ到着。ウイルスの件で、中国人旅行者が居なくなった成田空港は、声を出せば響きそうなくらい、しんとしていてガラガラだ。そういえば中国人の観光が緩和される前の空港や街はたしかにこんなふうで、すこし昔に戻ったような感じもした。


 出発ゲートもいつもより人がまばらで、もしかしてこれは、ガラガラの機内でゆったり過ごせるのではなかろうか?と、期待をしていたが、出発時間も間近になると、どこからともなく若い学生たちがわらわらと集まりはじめ、あっという間に賑やかに。ちょうど大学生の春休みと卒業旅行の時期で、彼らのほぼ全員が、学生専用の格安のツアーの参加者のようで、たびたび各社のバッジをつけた中年の添乗員らがやってきて、何やら説明をしては帰ってゆく。毎年、2、3月は、中国の春節と学生旅行のシーズンが続くから、旅行は避けていたのだが、こんなにも旅行者が多いとは思いもよらなかった。


 今回、はじめに搭乗するカタール航空は、サービス良く、清潔で、機内食が美味しく、座席も狭くなく、アメニティも素敵な中東系の航空会社で、ドーハのハブ空港から世界各国の都市へ行ける大変便利なもので、文句の言いようのない上に経営が心配になるくらい大変格安なので、私もヨーロッパ旅行をする際に、ときどき利用している。


 いわゆる日本での旅行シーズンに旅をしたことがなかったので、いつもガラガラなのを承知して、団体のいないビジネスエリアのすぐ次に位置する、エコノミーの前列路側を予約し(団体客は通常、機体の最後部エリアの客席になる)、誰も座る予定のない席を2つ3つ使ってゆっくり寝ていこうと考えていた。しかし、今回はそうはいかないようで、エコノミー席は満席。深夜便で寝るだけなので、問題ないが、ねむりに眠りにつくまで、機内で配信されていたホラーなのかギャグなのかよくわからない映画“イット”を見ながら、お金を出して、アエロフロートの直行便にすればよかったかな、と、後悔してしまった。



(みんな大好き機内食。これはカタール航空の。

上は夜食

レーズン入りのピラフ、ミニお蕎麦、パン、チーズ、ババロア。このほかにお菓子もついてる。

下は朝食

オムレツ、チキン、果物、マッシュルームとトマトのソテー、パン、ババロア・・・かな?茶色いハンバーグみたいに見えるの、なんだっけ?

みんな美味しいよ。

以前乗った時のと食器が変わった気がする。前は使いづらいオシャンティプレートできた気がするけどなー、違う航空会社だったかな?
飲んだ後も、水筒がわりにして持ち歩くのにちょうど良さそうな、スリムなミニボトルの水を3本ぐらいもらったが、うっかりして水を入れたまま手荷物の中に入れっぱなしにして降りてしまい、ドーハの荷物検査で没収されてしまった。残念。)


 12時間半飛んで、早朝のドーハに到着し、モスクワへの便が届くまで、蒸し暑い空港内でしばし休憩。さっきまで一緒だった若者たちは、民族大移動のように、ヨーロッパ行きの便へ急ぐ。この子たちのほとんどが、ドイツやフランス、そしてイタリアの方へ行くのだなと。成田と同じように、中国人観光客がいないドーハの空港。深夜から早朝はいつもがらんとしているけど、不気味なくらい静寂が続く。待つこと数時間。乗り換えの小型機に搭乗し、モスクワ時間の12時半ごろに、ようやくドモジェドボ空港へ到着した。


 2月半ばの成田のウイルス対策は、いつもと変わらず手指用の消毒液とマスクくらいで、これと言ったものはなかったのだけど、ドモジェドボ空港も消毒液くらいしか置いていなかった。しかし、日本と違うのは、大使館からのおしらせにあったように、中国人入国者を問答無用で足止めさせているらしく、入国カードを作ってくれるパスポートゲートの出口で、簡易テーブルに小さな中国国旗を立てて誘導させ、なにやら厳しく取り締まりをしていた。
 

 入国ゲートを通り、まずはATMのキャッシングで現地ルーブルを用意し。そして1ヶ月使い放題のSIMカードを購入する。今回はMTCという名前の携帯電話会社を選び、ネットも通話も1ヶ月使い放題のプランを選んだ。2000ルーブルで、現地の相場で安いのか高いのかよくわからないが、日本円にすると約3400円で1ヶ月間使用制限無しはかなり格安ではなかろうか。携帯会社のアプリをインストールしてみると、どうやらテレビや映画が見放題のほか、クーポンやらの多数のサービスもついてくるという。日本携帯電話会社も頑張ってもらいたいところだ。


 ところで、ロシアではLINEが使用できないという話があるが、SIMカードを抜いた状態で、Wi-Fi通信で試してみたら、なんの問題なく、チャットも通話もテレビ電話も使えた。GoogleもFacebookもアクセスできなかった中国ほどガチガチに規制しているわけでは無いようだ。しかし、今回はSIMカードを頻繁に抜差しするわけにはいかないため、日本にいる家族とのやり取りには、LINEに近いGoogleのチャットアプリ「ハングアウト」を利用することにした。こちらはロシアでも問題なく利用できる。というか、そもそもLINE自体、限られた地域でしか流行していないので、国によっては無くても困らないのだろうが。


 現金OK、通信OK、クレジットカードも書類もOK。心強い仲間がそろったところで、ドモジェドボ空港の玄関を出た。凍てつくような寒さを期待していたのだが、拍子抜けするような穏やかな陽気だった。Twitterで得たモスクワの情報で、異例の暖冬だとは聞いていたが、この日の気温は3度。マイナスではなくプラスの3度だ。湿気が少ないせいか、東京にいるより暖かく感じる。冬の海外旅行では、2011年12月上旬から中旬にイタリア中部と北部を数都市、2016年12月上旬にチェコのプラハへ行ったことがあるが、そこよりも北に位置し、しかも最も寒くなるはずの2月のモスクワのほうが暖かく感じる。地球の不思議よ。



 空港の出口を出て、南側にある、空港と都市部を結ぶ特急列車、アエロエクスプレスの玄関口へ向かう。券売機でチケットが購入できるはずなのだが、どうも操作がうまくいかず、けっきょく窓口のおばちゃんから購入することになった。切符代片道500ルーブル。日本円で約870円だ。両替もしたかったので、ちょうど良かったのかもしれない。


 改札を出ると、すでに電車が到着しているのが見える。アエロエクスプレス専用の駅舎のせいか、ホームは1つだけで、屋根の作りも簡易にできているため、つるんとした丸みのある赤く可愛らしい車体が、いっそう映えてみえる。電車が来るまでホームで写真を撮りながら待っていようかと思っていたが、乗り遅れてはいけないと思い、スマホでささっと車体を数枚撮った後に搭乗することにした。

 2階建ての車内は真新しい雰囲気で、掃除も行き届いている。せっかくなので2階にしようと思ったが、荷物があるので1階に座ることにした。乗客はまばらで、高齢者と家族連ればかり。旅行カバン置き場もあったが、少し不安なので座席に持っていってみた。シートは座り心地が良く、前の座席との感覚が広めで、プラスチックの旅行カバンとリュックが置ける余裕があるのは嬉しい。清潔なトイレもあり、無料のWi-Fiも使えるので文句なしだ。車内販売もある。着席後、すぐに電車が発車した。
 終点のパヴェレツカヤ駅までひたすら北上してモスクワ中心地を目指す。車内からは郊外の景色が見える。空港に近いところは、そこそこ雪が積もっていたが、それもほんの短い区間で、あとは雪のない寂しい冬景色が続く。途中数駅停車しながら、45分ほどで終点に到着した。


 終着駅といっても、海外では良くある屋根のない野外にコンクリートの古めかしいホームがあるだけだ。一応、地下鉄のパヴェルツカヤ駅と繋がっているが、アエロエクスプレスから地下鉄の建物の入り口まで屋根の無いので、吹雪や雨の日は、ほんの少しのあいだ、濡れる覚悟が必要だ。


 駅舎に入ると、目の前に、空港の手荷物検査口にあるようなゲートと、荷物を通すX線コンベアがあらわれた。モスクワの鉄道の駅では、必ず、人が通る探知機ゲートが設置してあり、大きな荷物がある時は、改札に立っている駅員らしき人が検査用の棒でカバン周辺を撫でるようにチェックしてくるのだ。はじめて体験する人はびっくりするかもしれないが、安全のためだと考えるとかえって安心できる。そしてここは高速鉄道の出入口でもあるので、手荷物検査用の機械が設置してある。大事に手入れされているようだが、使い倒され、くたびれたような、なんとも頼りない雰囲気がある機械に、トランクやらリュックやらがつぎつぎと飲み込まれては、また持ち主の手に渡る。待つこともなくスルスルと進むので、ストレスはないが、本当にX線検査をしているのかどうか怪しい雰囲気もある。


 ゲートを通る列を待つ、ほんの少しの間に、母娘、夫婦、男性ペアの3組の日本人を見かけた。同じ便でモスクワへやってきたのだろう。なんとなく、お互いの旅の無事を心の中で祈ってしまった。


 トランクを引いて、地下鉄の改札口を目指す予定なのだが、ハブ地下鉄よろしく、どうも複雑にできているようで、次に乗る茶色い目印のメトロ5番線へなかなかたどり着けない。しかし、東京都内の各種ターミナル駅に比べたらだいぶ優しい。というかむしろ、東京都の鉄道以上に複雑になってはいけないのだ。旅人達の不安が命に関わる。
 ようやく目当ての改札前にたどり着き、窓口で地下鉄のカードを購入する。トロイカカードと言い、日本でいう、スイカやイコカのようなチャージ式の交通機関共通乗車カードで、プラスチックでできている。とりあえずカード代込みで350ルーブルだけ入れてもらった。日本円で500円くらい。これで10回近く乗れる、忘れないでおこう。

 


(馬かっこいいトロイカカード。トロイカとは、ロシア特有の3頭立ての馬車のこと。ちなみに数字の3はロシア語でトリー。)

 しかしこの交通カード、日本でもトロイカという民謡でお馴みの名前と、3頭の白馬の絵柄が、いかにもロシアに来ている、という風があってとても良い。トロイカにならうと、日本であれば、力車か駕籠になるのだろうか、日本でもそういった名前の全国共通の交通カードになると面白いかもしれない、などと考えたりした。
 このカードは窓口やカード販売機のほか、スマホのアプリでもチャージが可能だ。チュブラーシカのような人気アニメなどの柄もある。モスクワの交通カードは他にもあり、赤い紙製でできた回数券カードや、緑色の時間制限のある乗車カードなど、その他、ブレスレットや指輪にマイクロチップを入れたアクセサリータイプの変わった乗車券もあった。 
 
 ホームへ向かうと、構内のデザインを見物する余裕もなく、すぐに電車がやってきた。乗車10分ほどで、予約したホテルのある、プロスペクト・ミーラ駅へ到着すると、柔らかな色彩で、農作物や花々、ガーデナー達をデザインしたモザイクの、爽やかな景色が飛び込んできた。モスクワの地下鉄駅は、各駅ごとに違ったデザインをされていることで有名だ。その件や、地下鉄に関しては、また後ほど書きたいと思う。出口へ向かう長いエスカレーターを降りると、あっという間に外へ出た。



(なぜか入口の写真しか撮ってなかった💦。)

 1軒目のホテルは、プロスペクト・ミーラ駅から5分ほど歩いたところにあった。Google MAPの情報をみると、世界各国の利用者から好印象のコメントがならび、日本人の個人旅行者の口コミもあり、交通の便もよく、そして安い。ということで、ここを選んだ。ホテルの入り口が殺風景で、戸も民家の玄関のように狭く、ここで良いのか戸惑ったが、中へ入るときちんとしたホテルのフロントが現れてほっとした。口コミによると、受付の若い女性がとても優しく接してくれて、安心した、といったようなことが書いてあったが、まさにそのズバリであろう女性従業員が対応してくれて嬉しくなった。


 挨拶をして、パスポートとバウチャー、印刷したExpediaの予約証明書渡す。ガイドブックや噂によると、ロシアのホテルのチェックインには、手続きもろもろで10分以上の時間がかかる、といったものがあったが、そんなことはなく、他国と同じように、3分程度で終了して驚いた。これは今後泊まる2軒のホテルでも同様。長いと言っている人たちは、ひょっとしたらツアーできていたのかもしれないし、システムそのものが変わってきているのかもしれない。


 サインをしてカードキーを受け取り、レストランと Wi-Fiの案内を受ける。最後に、毎日お茶の時間から夕食までのあいだ、食堂でロシアのお茶やお菓子を無料で振る舞っているから来てね。と笑顔で誘われたが、このご時世、どうも気まずい雰囲気があって、1度もうかがえなかったのが申し訳なかった。しかし、フロントデスク前にサモワールとお茶、たくさんのお菓子が並んでいたので、ほんの少し頂いた。次回またここに泊りにくる際は、たくさんご馳走になろう。


 さて、肝心の室内は、一般宅の空き部屋をホテルのようにデコレーションしたかのような雰囲気だが、10畳はありそうな十分すぎる広さで、ベッドも大きくちょうどいい柔らかさ。冷蔵庫もエアコンも薄型テレビもあり、クローゼットもとても大きく、Wi-Fiも文句無し。シャワーははじめてのカプセル型の多機能タイプで、壁からもシャワーが出たりしてなかなか楽しい。

 ペットボトルの無料の水も毎日2本いただける上に、廊下にウオーターサーバーがあり、アメニティもオシャレで充実していて、掃除も行き届いているが、電気ポットが無いのが残念かな。旅行用のミニケトルを持ってきてよかった。住宅街なので窓からの景色は期待していなかったが、隣は目と目が会うような高さでは無い低層の会社の裏庭のようで、毎日の空模様を確認できてよかった。


 シャワーを浴びて、ひと休みしてから食材の買い出しに。朝食無しの予約をしたので、朝ごはんやらが必要になるのだ。
 住宅街なので、近所にスーパーが数件あり、そこいらを全てはしごしながら周辺チェック。すこし歩くとあっという間にクレムリンへ続く道へ向かう大通りに出た。もしかしたら、徒歩だけでもいろんなところへ行けるかもしれない。


(ひとり旅ホテルメシ。だいだい毎回こんな感じ、日によってプラスマイナスがつく。赤いキャップのパウチはマヨネーズ。)


 日本ではなかなかお目にかかれない、大好きな黒食パンと、きのこ味のクリームチーズ、牛乳、野菜、果物、ハム、粉末レトルトスープ、お菓子、ジュース、それから衣料用洗剤などを購入。マヨネーズを買ったのだが、面白いのが、パウチのスポーツドリンクのように、平たいパックにプラスチックの注ぎ口がついている容器に入っている。非常に使いやすく、量が減ると小さくなるので、がさばらず、最後はハサミで開けば一滴残らず使い切れそうで、捨てる前に容器を洗うことも簡単であろう。このタイプのものは、ジャムやケチャップ、ドレッシング、ステーキソースと、とにかく火を通さずに食べられるソース系のものが、他社多用にあらゆるものがずらっと並んでいた。プラスチックボトル問題にも一石を投じられそうである。これは日本も真似をするべきだな、と思った。


 ホテルに戻って夕食の準備を済ませ、テレビをつけると、アニメのチャンネルが映った。よく見ると、個人的に絶賛ハマり中のマイリトルポニーがやっているではないか。しかも最終シーズンの9だ。これはなんかの縁かしら。

 また、ロシアの最新児童向けTVアニメについて、非常に素晴らしいものが揃っていたので、後ほど何点か紹介したいなと思う。



 雪もなく、凍えるような寒さもなく、太陽の穏やかな光が街を照らす2月のモスクワ。思いがけない暖冬のおかげで、想像していたロシアの冬とは大きくかけ離れた景色になったが、観光をするには好都合だろう。これから1ヶ月、悪いことが起きないようにと、旅の無事を祈るばかりのスタートだ。


次回、2日目。
『レーニンを見に行いきた~い!の巻』
へ、つづく。

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